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コラム 【「冬になると朝起きられなくなるんです。冬眠でしょうか?」 〜季節性感情障害 Seasonal Affective Disorder (SAD) 〜】
日照時間がもっとも短い時期ですね。
この時期になると「朝起きられない」「いくら寝ても昼間も眠い。やる気も出ない」
「甘いものが食べたい」「炭水化物が食べたくて仕方ない」といったお悩みを
耳にすることが多くなります。
季節性感情障害(SAD)では冬になると抑うつ気分や過眠、
糖質の摂取欲求の高まりを反復します。
日照時間の短縮が原因と考えられています。
季節性感情障害(SAD)は女性に多く、
季節性感情障害(SAD)を体験する方の3分の1は春先から夏にかけて気分が高揚する躁症状を体験するといわれます。
つまり、抑うつ状態だけを体験される方と双極性(躁と抑うつ)の気分の波を体験される方がいらっしゃいます。
治療法は、光療法、抗うつ薬内服、心理療法がありますが、
いずれの治療法も強固なエビデンス(医学的根拠)には裏付けられていません。
光療法は、光ボックス等により午前中に行うと効果的とされます(2500ルクス程度の光)。
光に当たるだけの治療法とも言えるわけで、副作用も少ないです。
ちなみに、Am○○onで「光療法」というキーワードを入れてみると3,000円台〜30,000円程度の範囲で
様々な光ボックスが市販されています。
また、光を浴びる屋外での運動も効果的とされます。
薬物療法では日中の眠気や倦怠感といった副作用を生じせしめにくい抗うつ薬が選択されます。
基本的にはSSRIが用いられます。
日本では未販売のものもありますが(bupropionなど)、
セルトラリンなど本邦でも処方可能なSSRIの内服についても知見が集まっています。
日照時間が短くなる秋から内服を開始し、春には内服を中止します。
心理療法については科学的な答えはまだでていません。
しかし、冬至を境に日照時間は延びていくことを念頭に、
それ以上の心理的悪循環に陥らないことは大切かもしれません。
以上、季節性感情障害(SAD)の治療について説明いたしましたが、
光療法が薬物療法と同等の効果を期待できるのか、薬物療法が光療法の効果を増大させるか、
あるいは心理療法(認知行動療法)がより適切な治療法であるのかなどは、まだ科学的に確認されてはいません。
このため、患者さんのご希望を伺いながら治療法を選択していきます。
主治医とよく相談してみてくださいね。
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