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認知症の行動・心理症状について
高齢化が進む中、認知症の患者さんの数は増えている傾向にあります。[1]
認知症の一般的なイメージとしては、病名の通り認知的な症状が主に知られていると思います。
ですが脳の異常から起こる病気なので、脳が通常仕切る他の役割にも支障が起こります。また、認知症の種類によってどのような症状が現れやすいかも変わっていきます。と言いますと、認知症というのは自立が困難になる程度の認知的な支障が出ている状態を示す病名です。なので脳梗塞の後の後遺症や脳への支障が徐々に進行する病(神経変性疾患)などの原因が異なる病も認知症の中に含まれます。
今回の記事では症状が特に重いとされる神経変性疾患による認知症に付随する行動的や心理的な症状についてわかりやすくまとめたいと思います。
アルツハイマー病による認知症に伴う心理的な症状
アルツハイマー病に伴う行動や心理症状の発症率は56%から98%と言われています。 [2]
その症状の一部として妄想・幻覚・不安感・焦燥・行動の抑制力の低下・異常な食行動などが挙げられます。[3]
レビー小体を伴う認知症・パーキンソン病による認知症
アルツハイマー病と同じく不安感・焦燥・行動の抑制力の低下などの症状が一部として見られます。[4]
他の認知症と比べ、レビー小体による認知症がある方は妄想や幻覚を発症しやすいと言われています。[5] しかし、抗精神病薬はこの病をお持ちの患者さんにはあまり適していないので、妄想や幻覚の病状を管理するのが難点です。[4]
なので患者さんの生活の質を向上するため、睡眠障害やうつ状態の軽減を目的とした認知行動療法(CBT) などを用いる選択肢が代わりにあります。[6]
行動的・心理的な症状の緩和に役立つ音楽療法
患者さんとそのご家族に多大なるストレスを与え兼ねない症状の多くですが、どのような方法で心の負担を軽減することができるのでしょうか。最近の研究によると認知症の中、一番長く機能性を保つ脳の部位が音楽的な情報を納める場所であることが報告されています。[7] 心地良いBGMを流すことで、患者さんの不安が有意に低下されるという研究結果も発表されています。[8] さらには焦燥行為、うつ状態にも有意な効果が得られています。[9] 動ける方はダンスや、タンバリンのように簡単に使える楽器の使用を取り入れる療法もあります。体を動かすことでストレス発散や、周りのご家族や介護士の方との交流を促進する効果が期待できると思われています。以上の結果をもとに、患者さんが前よく聞いていた曲や好きな歌手や作曲家の音楽をかけてみると心の安らぎにつながると考えられます。
大変な毎日を送られている方に少しでも幸福のヒントを与えられたらと、こちらの記事にまてめさせていただきました。生活の質に多大なる変化をもたらす認知症ですが、心理療法で症候の管理ができる研究が最近多くなっております。将来もっと新しい効果的な療法が見つかることに期待をしております。
引用文献
[1] McDonald, W. M. (2017). Overview of Neurocognitive Disorders. Focus (American Psychiatric Publishing), 15(1), 4–12. https://doi.org/10.1176/appi.focus.20160030
[2] Mintzer, J. E., Hoernig, K. S., & Mirski, D. F. (1998). Treatment of agitation in patients with dementia. Clinics in geriatric medicine, 14(1), 147-176.
[3] Garre-Olmo, J., López-Pousa, S., Vilalta-Franch, J., de Gracia Blanco, M., & Vilarrasa, A. B. (2010). Grouping and trajectories of the neuropsychiatric symptoms in patients with Alzheimer’s disease, part I: symptom clusters. Journal of Alzheimer’s Disease, 22(4), 1157-1167.
[4] Ballard, C., Aarsland, D., Francis, P., & Corbett, A. (2013). Neuropsychiatric symptoms in patients with dementias associated with cortical Lewy bodies: Pathophysiology, clinical features, and pharmacological management. Drugs & Aging, 30(8), 603–611. https://doi.org/10.1007/s40266-013-0092-x
[5] Brodaty, H., Connors, M. H., Xu, J., Woodward, M., & Ames, D. (2015). The Course of Neuropsychiatric Symptoms in Dementia: A 3-Year Longitudinal Study. Journal of the American Medical Directors Association, 16(5), 380–387. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2014.12.018
[6] Zarotti, N., Eccles, F. J. R., Foley, J. A., Paget, A., Gunn, S., Leroi, I., & Simpson, J. (2021). Psychological interventions for people with Parkinson’s disease in the early 2020s: Where do we stand? Psychology and Psychotherapy: Theory, Research and Practice, 94(3), 760–797. https://doi.org/10.1111/papt.12321
[7] Jacobsen, J.-H., Stelzer, J., Fritz, T. H., Chételat, G., La Joie, R., & Turner, R. (2015). Why musical memory can be preserved in advanced Alzheimer’s disease. Brain, 138(8), 2438–2450. https://doi.org/10.1093/brain/awv135
[8] Irish, M., Cunningham, C. J., Walsh, J. B., Coakley, D., Lawlor, B. A., Robertson, I. H., & Coen, R. F. (2006). Investigating the Enhancing Effect of Music on Autobiographical Memory in Mild Alzheimer’s Disease. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders, 22(1), 108–120. https://doi.org/10.1159/000093487
[9] Abraha, I., Rimland, J. M., Trotta, F. M., Dell’Aquila, G., Cruz-Jentoft, A., Petrovic, M., Gudmundsson, A., Soiza, R., O’Mahony, D., Guaita, A., & Cherubini, A. (2017). Systematic review of systematic reviews of non-pharmacological interventions to treat behavioural disturbances in older patients with dementia. The SENATOR-OnTop series. BMJ Open, 7(3), e012759. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2016-012759
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