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2022.08.16

気軽に心理学:睡眠

先日イギリス・ロンドンでは40度を超える暑さを記録しました。イギリスでは基本的にはエアコンを設置している家庭が少ないです。逆に熱がこもるような造りの住宅では、夜になっても室内の高温が続きました。自らも寝苦しい夜が続く中、疲れがなかなかとれず少し体調を崩してしまいました。

今回は心理学の研究に基づいて睡眠について話したいと思います。

 睡眠の大切さ

 私たちは一日を通して圧倒的な量の情報を取り込まなければなりません。そのすべての情報を記憶するとしたら、情報量に圧倒されてしまうことは容易に想像がつくでしょう。

幸いなことに、重要でないと判断された情報のほとんどは忘れ去られます。一方、重要な情報は睡眠中に無意識のうちに再生され、長期記憶に定着します。[1]

私たちが 日中に受けるストレスは免疫力を弱める作用のあるホルモンの分泌につながります。睡眠は体のストレス量を下げることで、免疫力の機能を最適化することを可能にしています。[2]

 

このように、睡眠が妨げられると身体的・心理的な健康状態に影響が出るのです。

 

心理状態との関係性

 

睡眠の質の低下は、長期的にはうつ病の発症リスクにつながることが示唆されています。うつ病の顕著な症状の一つに睡眠障害がありますが、不眠症も単独でうつ病の発症に関与することがあります。[3] 不安障害やパニック障害を持っている方で睡眠障害を以前から経験している人も多いとされています。[4] したがって、睡眠の質を向上させることはうつ病・不安障害・パニック障害のリスクや症状を軽減する有効な方法であると考えられます。

 

睡眠衛生を改善する方法 [5]

 

睡眠衛生とは、良い睡眠をとるための行動や環境のことを指します。ここではどうすれば良い睡眠をとることができるのかを紹介したいと思います。

 

– 定期的に運動する

– アロマセラピーやマインドフルネスに取り組むなど、ストレスを与える物事から集中を外す手段に取り組んでみる [6,7]

– 無意識でも脳活動は音に反応するので、音に敏感な人は特に耳栓をしてみる [8]

– 規則正しい睡眠スケジュールを心がける

 

 

不眠症の方は、上記の推奨事項に加えて不眠症のための治療法(CBT-Iなど)の訓練を受けた心理士や自分に体に合ったお薬を処方できる精神科医のアドバイスを受けることをお勧めします。

 

最後に

 

日本ではこれからますます暑くなり、寝苦しい夜も増えてきます。上記の方法に加えて適切な室温にも注意し、少しでも良質あ睡眠をとるようにしましょう。

 

 

参考文献

 

[1] Klinzing, J. G., Niethard, N., & Born, J. (2019). Mechanisms of systems memory consolidation during sleep. Nature Neuroscience, 22(10), 1598–1610. https://doi.org/10.1038/s41593-019-0467-3

[2] Jawabri, K. L., & Raja, A. (2022, May 8). Physiology, Sleep Patterns. Florida. Retrieved from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK551680/.

[3] Buysse, D. J., Angst, J., Gamma, A., Ajdacic, V., Eich, D., & Rössler, W. (2008). Prevalence, course, and comorbidity of insomnia and depression in Young Adults. Sleep, 31(4), 473–480. https://doi.org/10.1093/sleep/31.4.473

[4] Batterham, P. J., Glozier, N., & Christensen, H. (2012). Sleep disturbance, personality and the onset of depression and anxiety: Prospective cohort study. Australian & New Zealand Journal of Psychiatry, 46(11), 1089–1098. https://doi.org/10.1177/0004867412457997

[5] Irish, L. A., Kline, C. E., Gunn, H. E., Buysse, D. J., & Hall, M. H. (2015). The role of sleep hygiene in promoting Public Health: A review of empirical evidence. Sleep Medicine Reviews, 22, 23–36. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2014.10.001

[6] Hwang, E., & Shin, S. (2015). The effects of aromatherapy on sleep improvement: A Systematic Literature Review and meta-analysis. The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 21(2), 61–68. https://doi.org/10.1089/acm.2014.0113

[7] Ong, J. C., Shapiro, S. L., & Manber, R. (2008). Combining mindfulness meditation with cognitive-behavior therapy for insomnia: A treatment-development study. Behavior Therapy, 39(2), 171–182. https://doi.org/10.1016/j.beth.2007.07.002

[8] Wilkinson, R. T., & Campbell, K. B. (1984). Effects of traffic noise on quality of sleep: Assessment by EEG, subjective report, or performance the next day. The Journal of the Acoustical Society of America, 75(2), 468–475. https://doi.org/10.1121/1.390470

 

 

 

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